連載19 忍者活劇! 闇を断ち切れ!! アトリエ・センターフォワード第5作『刃、刃、刃!』
2015.03.30 Monday
オタマ わかった。…だとしたら、姉ちゃは馬鹿じゃ。
ハヌケ なに?
オタマ わたいは姉ちゃとは違う。
ハヌケ うぬ。
オタマ 一人で行かせたのが間違いだったのじゃ。自ら死を選ぶなぞ、屍のやることじゃ。
ハヌケ 確かにうぬとは違うわ。ヒナノは美しかった。命を失ってでも、うぬのような役目は拒み続けたのだからな。
オタマ なんじゃ、それは。死んで誰が喜ぶのじゃ? 自分で満足しているだけではないか。
ハヌケ うぬ。
オタマ 一番怖いのは、自分で自分を縛ることじゃ!
ハヌケ …。ヒナノを愚弄するな。
ハヌケの怒りとともにヒナノ、若い男がオタマに襲いかかる。
必死で逃げるオタマ。
ツブテ オタマ!
身を挺してかばうツブテ。
ヒナノや若い男の刃を必死で防ぐ。
ヒナノ どけ、ツブテ。
ツブテ 姉者。
ヒナノ わたしには何も言ってくれなかった。
オタマ 屍じゃ、兄ちゃ。
オタマが刀をツブテに差し出す。
ツブテ …。
ヒナノ どけ。陰で震えていたうぬには何もできぬ。
ヒナノが襲いかかる。
ツブテ すまぬ、姉ちゃ!!
ツブテはオタマから取った刀でヒナノを斬る。
ハヌケ ヒナノ!
ヒナノは支えを失ったように倒れる。
ハヌケがヒナノに抱きつく。
若い男がしりもちをつく。
お互いを庇いあうようにしながらツブテとオタマはヒナノを見ている。
ヒナノを抱いていたハヌケが泣いているようだ。
ツブテ ハヌケ。…ハヌケ!
ハヌケ うぬにはわからん!
ツブテ …。
ハヌケ ヒナノ。…すまなかったな、ヒナノ。おれはだめな男じゃ。見ているしかできなかったな。お前になにもしてやれなかったな。
サイゾウ …ハヌケ。おれのせいじゃ。
ハヌケ …知ってるか? ヒナノは一度、おれの脚をさすってくれたことがあるのだぞ。
サイゾウ …そうか。
ツブテ …うぬ。その女をどこで拾ってきた?
ハヌケ …。
ツブテ 術のために、殺したのか?
ハヌケ …狂人じゃ。雑兵の慰み者になっておった。
ツブテ …うぬが殺したのか?
ハヌケ …不幸な女じゃ。
ツブテ うぬが決めることなのか?
ハヌケ …(決然と)うぬにはわからぬ。
ツブテはサイゾウを覗き込む。
ツブテ サイゾウ。動けるか?
サイゾウ …無理じゃ。
ツブテ …そうか。
ツブテはサイゾウをなんとか担ごうとする。
今にもつぶれそうな様子。
やっとのことで、背中に担ぎ、歩こうとする。
オタマ 兄ちゃ。
ツブテ …抜けるぞ。
オタマ え?
ツブテ 抜けるのじゃ。
オタマ …そうか。
ツブテ 供にじゃ。オタマ。
オタマ …うん。
ツブテ …(ハヌケを見て)ハヌケ?
ハヌケ 勝手にせい。
ツブテ …(オタマに)行くぞ。
オタマ うん。
サイゾウを担ぎながら少しずつ歩くツブテ。
が、とても無理そうである。
サイゾウ (咳払いして)ツブテ。
ツブテ どうした? 辛抱せい。
サイゾウ いや、言いにくいのだが、…無理ではないか、これは?
オタマ サイゾウ!
サイゾウ いや、おれが言うのもなんだが。
オタマ そうじゃ。
サイゾウ だが、出来そうに見えるか、オタマ?
オタマ …。
ツブテ たわけ! なんとかするのじゃ。
オタマ なあ、こういうときの術はないのか?
ツブテ ない!
オタマ …そうか。
ツブテ たわけ! そう都合よくいくものか。
サイゾウ …あっという間に殺されてしまうな、これは。
オタマ …秒殺じゃ。
ツブテ …。
サイゾウ いや、おれが言うのもなんだが。
オタマ すまぬ、兄ちゃ。
ツブテ …試してみなければわからぬ。一人で闇に飲まれるよりはましじゃ。うぬらの力を貸してくれ。
サイゾウ …わかった。頼む。
オタマ かっこいい!
ツブテ からかうな。…うぬも手伝え。
オタマ うん。(足を持つ)
オタマはサイゾウの足を持つ。
するとサイゾウの体は水平になるが、
担ぐツブテの体勢はますますキツくなる。
ツブテ オタマ!
オタマ なんじゃ!
ツブテ …引っ張るなよ。
オタマ …わかっておる。
よろよろと動き出す三人。
オタマ 兄ちゃ、からかってはおらんぞ。
ツブテ やかましい。
サイゾウ うぬ、臭いなあ。
ツブテ やかましい。
オタマ …重い。
ツブテ やかましい!
不恰好に出て行く三人。
若い男が少し笑う。
溶暗。
エピローグ
朝。
雨はもう降っていない。

ハヌケ なに?
オタマ わたいは姉ちゃとは違う。
ハヌケ うぬ。
オタマ 一人で行かせたのが間違いだったのじゃ。自ら死を選ぶなぞ、屍のやることじゃ。
ハヌケ 確かにうぬとは違うわ。ヒナノは美しかった。命を失ってでも、うぬのような役目は拒み続けたのだからな。
オタマ なんじゃ、それは。死んで誰が喜ぶのじゃ? 自分で満足しているだけではないか。
ハヌケ うぬ。
オタマ 一番怖いのは、自分で自分を縛ることじゃ!
ハヌケ …。ヒナノを愚弄するな。
ハヌケの怒りとともにヒナノ、若い男がオタマに襲いかかる。
必死で逃げるオタマ。
ツブテ オタマ!
身を挺してかばうツブテ。
ヒナノや若い男の刃を必死で防ぐ。
ヒナノ どけ、ツブテ。
ツブテ 姉者。
ヒナノ わたしには何も言ってくれなかった。
オタマ 屍じゃ、兄ちゃ。
オタマが刀をツブテに差し出す。
ツブテ …。
ヒナノ どけ。陰で震えていたうぬには何もできぬ。
ヒナノが襲いかかる。
ツブテ すまぬ、姉ちゃ!!
ツブテはオタマから取った刀でヒナノを斬る。
ハヌケ ヒナノ!
ヒナノは支えを失ったように倒れる。
ハヌケがヒナノに抱きつく。
若い男がしりもちをつく。
お互いを庇いあうようにしながらツブテとオタマはヒナノを見ている。
ヒナノを抱いていたハヌケが泣いているようだ。
ツブテ ハヌケ。…ハヌケ!
ハヌケ うぬにはわからん!
ツブテ …。
ハヌケ ヒナノ。…すまなかったな、ヒナノ。おれはだめな男じゃ。見ているしかできなかったな。お前になにもしてやれなかったな。
サイゾウ …ハヌケ。おれのせいじゃ。
ハヌケ …知ってるか? ヒナノは一度、おれの脚をさすってくれたことがあるのだぞ。
サイゾウ …そうか。
ツブテ …うぬ。その女をどこで拾ってきた?
ハヌケ …。
ツブテ 術のために、殺したのか?
ハヌケ …狂人じゃ。雑兵の慰み者になっておった。
ツブテ …うぬが殺したのか?
ハヌケ …不幸な女じゃ。
ツブテ うぬが決めることなのか?
ハヌケ …(決然と)うぬにはわからぬ。
ツブテはサイゾウを覗き込む。
ツブテ サイゾウ。動けるか?
サイゾウ …無理じゃ。
ツブテ …そうか。
ツブテはサイゾウをなんとか担ごうとする。
今にもつぶれそうな様子。
やっとのことで、背中に担ぎ、歩こうとする。
オタマ 兄ちゃ。
ツブテ …抜けるぞ。
オタマ え?
ツブテ 抜けるのじゃ。
オタマ …そうか。
ツブテ 供にじゃ。オタマ。
オタマ …うん。
ツブテ …(ハヌケを見て)ハヌケ?
ハヌケ 勝手にせい。
ツブテ …(オタマに)行くぞ。
オタマ うん。
サイゾウを担ぎながら少しずつ歩くツブテ。
が、とても無理そうである。
サイゾウ (咳払いして)ツブテ。
ツブテ どうした? 辛抱せい。
サイゾウ いや、言いにくいのだが、…無理ではないか、これは?
オタマ サイゾウ!
サイゾウ いや、おれが言うのもなんだが。
オタマ そうじゃ。
サイゾウ だが、出来そうに見えるか、オタマ?
オタマ …。
ツブテ たわけ! なんとかするのじゃ。
オタマ なあ、こういうときの術はないのか?
ツブテ ない!
オタマ …そうか。
ツブテ たわけ! そう都合よくいくものか。
サイゾウ …あっという間に殺されてしまうな、これは。
オタマ …秒殺じゃ。
ツブテ …。
サイゾウ いや、おれが言うのもなんだが。
オタマ すまぬ、兄ちゃ。
ツブテ …試してみなければわからぬ。一人で闇に飲まれるよりはましじゃ。うぬらの力を貸してくれ。
サイゾウ …わかった。頼む。
オタマ かっこいい!
ツブテ からかうな。…うぬも手伝え。
オタマ うん。(足を持つ)
オタマはサイゾウの足を持つ。
するとサイゾウの体は水平になるが、
担ぐツブテの体勢はますますキツくなる。
ツブテ オタマ!
オタマ なんじゃ!
ツブテ …引っ張るなよ。
オタマ …わかっておる。
よろよろと動き出す三人。
オタマ 兄ちゃ、からかってはおらんぞ。
ツブテ やかましい。
サイゾウ うぬ、臭いなあ。
ツブテ やかましい。
オタマ …重い。
ツブテ やかましい!
不恰好に出て行く三人。
若い男が少し笑う。
溶暗。
エピローグ
朝。
雨はもう降っていない。

